石國商店 直営店便り4月号② 石國商店 ルミネ荻窪店
コラムを閲覧していただき誠にありがとうございます。
今回は当店のヴィンテージウォッチの中でおすすめの逸品をご紹介いたします。
オメガ スピードマスターマークⅡ Cal.861
1969年に発表されたスピードマスターマークⅡは流線型のケースとラグ(ベルトの付け根部分)の無い作りで、とても個性的な見た目となっています。
こちらのモデル、スピードマスターという名前がついているものの、皆様が頭に思い描くあの宇宙に初めて行ったスピードマスターとはずいぶん違うデザインです。
いわゆるスピードマスターは1965年にNASA宇宙飛行士の標準装備品に認定されたことで一躍有名になりました。
NASAに正式採用されたスピードマスターは元々宇宙飛行士用に特別に開発されたわけではなく、市販の一時計として発売されていたものです。オメガはスピードマスターがNASAに正式採用されたことを受けて、宇宙に行くことを前提にした時計を作ろうと考え、そしてできたモデルがスピードマスターマークⅡでした。厚みのある重厚なケースは今までのスピードマスターとは一線を画す独特なデザインとなり、より一層、宇宙に適した作りになりました。
そしてオメガはNASAに「月に行くなら今度は」とスピードマスターマークⅡを提案しましたが、NASAはこれを不採用。理由は、「最初に選んだスピードマスターで充分だった」というものでした。なんということでしょう…。この話は銀座のニコラス・G・ハイエックセンターのオメガでショップの方から教えてもらったものです。
なんと悲しいエピソードでしょうか。そしてこのエピソードを聞いてから私はスピードマスターマークⅡがとても身近に感じられ、魅力的に思えてきました。
オメガが宇宙に行くことを思い描いてデザインされたマークⅡ。NASAに断られ宇宙に行けなかったマークⅡ。一見ゴツいように見えて意外と可愛いマークⅡ。
オメガのコレクションの中で最も個性的なデザインのこのモデルは54年前の時計とは思えないほど精度も良く(店頭での計測器上±3秒/日)、実際に着けてみるとベルトの駒一つ一つが小さい為、見た目以上に着け心地が良くしなやかに腕にフィットしてくれます。
石國商店 ルミネ荻窪店のヴィンテージウォッチコレクションのなかで異彩を放つスピードマスターマークⅡ。大変希少なオリジナルモデルですので是非お手に取ってご覧くださいませ。
by Kensuke Hosokawa