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分解掃除は必要なの?

「分解掃除(ぶんかいそうじ)」、またの名を「オーバーホール」。これを簡単に説明すれば、時計をバラしてからパーツごとに洗浄し、その後に注油しながら組み立て直すという作業のことです。

このワードを聞いてお客様が笑顔になるという話はあまり聞いたことがありません。なぜなら分解掃除にはコストも発生しますし、わりと長い作業期間も要します。外見もまったくの新品になるというわけではありません。それでも弊社が運営している小売店や有名百貨店の時計修理コーナーには連日お客様から分解掃除のご依頼が入ります。

どこのメーカーや代理店でも分解掃除は必要だと言います。とある国産メーカーは2~3年に一度。とある海外メーカーなら4~5年に一度など、各社若干の差異はありますが、どこでも定期的な分解掃除が必要だと説明しています。
しかしながら、お客様の中には、「丁寧に使っていたら、分解掃除しなくても大丈夫でしょ? これまで10年くらい使い続けているけど、なにも不具合なんて出たことがないし」などとおっしゃられる方がいらっしゃいます。 別にお客様が嘘をおっしゃっているわけではなく、そのように長いあいだ問題が見えてこない事例があることも事実です。しかし私たち時計修理技能士の立場からすると、正直、「そうですね~分解掃除なんて調子悪くなってからで大丈夫ですよ~」などと軽々しく言えるものでもありません。 なぜなら、メーカーなどが推奨しているメンテナンス期間程度に年数が経ってくれば、歯車やその他のパーツの要所にさしている油は乾いてしまっている状態になっているからです。そのような状態で使用されているとしたら、内部パーツにヘリが出てしまったり、針回しが重くなったりと、良いことはありません。当然そのような状況になると、時計機能として一番大事な「精度」にも影響が出てきます。 また、気付かないうちに湿気が入って内部で錆が発生している場合もあります。これは正直内部を見ないことには分からないところです。湿気が入った状態で長いあいだ何もしないでいると、分解掃除をしたときにパーツ交換が多く出てしまい、結果的に通常のメンテナンス代よりも高額な費用が発生してしまうこともよくある話です。そのような理由から、問題無く動いていたとしても、やはり分解掃除は定期的に出されることが望ましいと私たちは考えています。人間でいえば「健康診断」も兼ねるというところでしょうか。

定期的な分解掃除の必要性についての物理的な見解は以上です。ただし、分解掃除が必要かどうかを決めるもう一つ大事な要素もありますよね。それは「これからも末永く使い続けていきたい時計」であるかということになりますよね。
私たち時計修理技能士からお伝えしたいのは、お持ちの時計を末永く使い続けたいのであれば、定期的な分解掃除はしていきましょうということです。

最後に時計を長く使い続けるための原則を三つ挙げておきます。

①日頃から落としたりぶつけたりすることなく丁寧に扱うこと

②製品の仕様を理解して、取り扱い方法を守ること

③定期的に分解掃除をすること

 

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 by Tetsuro Enomoto