
「イシクニズム」 Vol.36
今西酒造
先日、今西酒造を訪ねて第14代当主今西将之氏の話を聞く機会を頂いた。
今西酒造は奈良で360有余年酒造りをしている酒蔵である。
1970年代、日本人の趣向が日本酒からビールやワイン等へと向かうようになり日本酒の消費量が急激に低下していった。
結果として多くの酒蔵が廃業に追い込まれていった。
今西酒造は日本酒事業の埋め合わせとして飲食業、宿泊業へと多角化を行いこの荒波の中でも生き残っていった。
その後、平成の時代となり飲食業、宿泊業も差別化を図らなければ収益を上げられなくなり、投資に資金が回らず設備の老朽化等様々難題に直面していった。
そんな中、現代表の今西氏は先代の急逝によって28歳という年齢でいきなり今西酒造の当主となった。
酒造りもしたことなく、経営もしたことが無かったそうだ。
モノづくりで重要なものは沢山あるが、特に重要なものは人と設備である。今西代表が会社を継いだ時、この2点が大きく不足していることが衝撃だったという。
二年間じっくりと考え、時には我慢をしながら飲食業、宿泊業を他の方に譲り、日本酒事業で生き残ることを決断したという。
まずは老朽化した設備を一新することを決め実行したそうである。
さらりと話してはいたが、厳しい状況が長く続いた企業がその資金を捻出することは並大抵のことではない。
しっかりとした事業プランと代表の情熱が無ければ資金は得られない。
次に、「おいしい酒を造る」という情熱を持った人と酒造りをしたいと考え、徹底して手を抜かない酒造りを目指したそうだ。
結果先代の時から居た製造に携わる社員は全員辞めていったそうだ。
結果一人で米を研ぎ、一人で蒸して、全ての工程を一人で行わなければならなかったそうである。
情熱を持った人としっかりとした設備が整い、評価の頂ける酒が出来るようになってくると、一緒に酒を造りたいという自分よりも年下の情熱を持った仲間が集まってきたそうだ。
そのような時、出てきた言葉が「清く正しい酒造り」という言葉だったそうだ。酒蔵は清いか。
道具一つ一つ清いか。この仕込みは正しいか。
常にこの言葉に立ち戻り、考え、行動していくことによって素晴らしい酒が生まれ、業績のV字回復につながっていった。
正に理念が言葉として力を持った瞬間だったと思う。




今西代表の三輪を愛する姿勢や新しい酒蔵(三輪伝承蔵)等々書きたいことはまだまだあるが長くなるので又の機会としたい。
理念は力なりを体現した方の話はとても興味深く勇気を頂いた。
当社も困っている人を笑顔にするという思いを常に中心に置き行動して行きたいと強く思いました。
今西代表ありがとうございました。
そして、設営に尽力して頂いた方々、当日アテンドをして頂いた方々にも心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
by Kunihisa Ishida