
時計ベルトの交換方法
腕時計に付いている革ベルトは、大抵のものは新しいベルトに交換できる仕様になっています。皆様が弊社のお店で時計ベルトをご購入される場合には、弊社の店舗スタッフが交換作業をしますが、中にはいろいろな理由からご自身で交換したい人もいらっしゃると思います。今回はそのような方に向けて、革ベルトの交換方法をご案内します。
そもそもご自身でベルトを交換できることのメリットというと、どういったものがあるでしょうか。
私が真っ先に思いつくメリットといえば、「ファッションウェアのようにいつでも好きなときに時計ベルトの着せ替えができる」ことです。
「明日は友人の結婚式だから白い革ベルトを着けていきたい」
「きょうの銀座でのデートでは一番お気に入りのワインレッドのワニ革ベルトを着けていこう」
「きょうはネクタイの色に合わせてグリーンのリザード革を着けよう」
そう思い立ったときにすぐ取り替えることができれば、おしゃれの幅も格段に広がります。それこそ時計ベルトの数だけ腕時計の模様替えができますので、時計の魅力もぐんと増すことになります。一つの時計に対して常に同じベルトで過ごされる人からすれば、これは大きな変化だと思います。
最近ではバネ棒にレバーが付いていて工具無しで取り外しができる仕様の時計ベルトも増えてきましたが、元に付いているベルトがすべてそういう仕様になっているわけではありません。通常の仕様のバネ棒であれば、やはり取り外しの技術が必要になります。
ちなみに、当社でも少しだけ料金をプラスすると、お買い上げいただいたベルトを簡単に工具無しで取り外しができる仕様に変更することができます。(当社ではフェルビン式と言っております)
コラム「時計ベルトの交換は難しい?」
では、本題に入ります。
はじめに本サイトでご紹介する方法を実際に行う場合には、すべて自己責任で行ってください。 時計本体及びベルトに傷を付けたり、怪我などをなさらないように十分にご注意ください。 お客様ご自身の作業に起因した事故等不測の事態につきまして、弊社では一切責任を負うことができませんので予めご承知おきください。 また、少しでも不安を感じた場合は無理をなさらず弊社のようなプロにご依頼ください。 |
作業内容一覧
0 専用工具を用意する
1 時計の裏蓋側を上して床に置
2 工具の先端をバネ棒の先の突起部分にひっかける
3 工具を動かしてバネ棒を縮める
4 バネ棒を横にずらして完全に外す
5 もう片方のベルトも同様にして外す
6 元のベルトからバネ棒を抜く
7 取り付けたいベルト(付け替えベルト)を用意する
8 付け替えベルトにバネ棒を入れる
9 完成イメージを明確にしておく
10 バネ棒の片側を時計のラグ穴に入れる
11 もう片方のバネ棒の先端を工具で押さえる
12 バネ棒先端をラグ穴にはめる
13 念のため工具を使用してバネ棒を押し込む
14 時計をきれいに拭く
----------完成
0 専用工具を用意する
まずは時計ベルトの取り外しに必要な専用工具を用意します。通称 “バネ棒外し” と呼ばれている工具です。

安いものでは1,000円しないものから、8,000円以上のスイス製のものまでいろいろとあります。「明工舎製作所」やスイスの工具ブランド「BERGEON(ベルジョン)」のものは、わりと扱っているお店が多いので見つけやすいと思います。石國商店の通販サイト石國商店ECでも写真でも使用されているBERGEON製の使い勝手の良い“バネ棒外し”を販売しておりますので、よろしければご利用ください。
BERGEON製“バネ棒外し”

このような工具をお持ちでない場合に小さめのマイナスドライバーで対応する人もいらっしゃいますが、弊社では初心者にはおすすめしていません。初心者には比較的安全に作業ができる専用工具のご使用をおすすめします。
1 時計の裏蓋側を上して床に置く
文字盤側を上にした状態でも作業が可能ですが、工具をすべらせてガラスを傷付けるリスクなどもありますので、時計ベルトの付け外しの際は裏蓋側を上にして行ってください。
また、慣れている人であれば時計を持ちながらベルトの取り外しができますが、初心者の人は不安定な状態にならないように必ず床に置いて作業しましょう。その際は、下に柔らかい布などを敷いてガラス面が傷付かないように注意しましょう。
※床に置く際、吸着力の強い透明のビニールクロスなどにガラス面を強く当てていると、持ち上げる際にガラスが外れてしまうことがありますのでご注意ください。
2 工具の先端をバネ棒の先の突起部分にひっかける
以下はバネ棒の写真です。

標準的なバネ棒は上の写真のような形状をしています。バネ棒の先端途中には一つか二つの突起部があり、ここにバネ棒外しの先を当てます。


※バネ棒には、工具をひっかける突起部分が無いタイプもあります。時計の足(ラグ)のサイドに外側まで穴が貫通している場合には、そのような突起部分の無いバネ棒を使用することがあります。その場合は工具のピン抜き棒側の先端部分をラグの穴の外側から入れてバネ棒を押すことで比較的簡単に外すことができます。
※もしラグのサイド(外側)に穴が開いていない時計に「突起部分の無いバネ棒」を使用してしまうと、そのあと取り外しが非常に困難になりますのでご注意ください。
工具の先端をバネ棒の先の突起部分にひっかける際、バネ棒が革ベルトに隠れて見えませんので、写真のように工具で革ベルトの端をずらしてバネ棒の突起部分を目視で確認しましょう。
構造を知っている人であれば、バネ棒の先が見えていなくても工具が当たる感触で取り外しできますが、慣れていない人はバネ棒の突起部分を目視で確認してから対応することをおすすめします。ただし、あまりずらしすぎると元の革が傷みますのでご注意ください。
※元の革ベルトを処分する前提であれば、ハサミなどを使用して革ベルトを切ってしまうと簡単に作業できます。ただし、その際に切断した革は元に戻すことができませんので再利用ができなくなります。自己責任でご判断・ご対応をお願いいたします。また、ハサミやカッターなどで革を切断する際にはご自身の手や時計を傷付ける恐れもありますので、お取り扱いには十分にご注意ください。
バネ棒タイプ以外にも、両ネジやリベット、パイプピン(C管)など別の方法でベルトが付いている場合もあります。その場合は、弊社のようなプロにお任せください。
3 工具を動かしてバネ棒を縮める

バネ棒の突起部分に工具の先端をひっかけたあと、矢印の方向にバネ棒外しを動かします。バネ棒の先が縮んで取り外し可能な状態になります。
4 バネ棒を横にずらして完全に外す

工具でバネ棒のバネを押した状態のまま、ベルトを横にずらして時計から完全に外します。
5 もう片方のベルトも同様にして外す

反対側のベルトも同じように外してください。
6 元のベルトからバネ棒を抜く

取り外した元のベルトからバネ棒を抜き出してください。
通常の場合には手で抜けると思いますが、固い場合には工具を使用してください。
その際、ペンチなどで抜くとバネ棒を潰してしまうことがあります。バネ棒外しの先で押し出すと比較的安全に取り出せます。
7 取り付けたいベルト(以後「付け替えベルト」)を用意する

付け替えベルトをご用意ください。
8 付け替えベルトにバネ棒を入れる

付け替えベルトの付け根の穴にバネ棒を押し入れます。
元のベルトに付いていたバネ棒を使用するか、新しいバネ棒をご用意ください。
※元のベルトに付いていたバネ棒が折れ曲がっていたり、バネの反発力が弱くなっていたり、または錆などの明らかな傷みがみられる場合には、必ず新しいバネ棒に取り替えてください。傷んだバネ棒を使い続けると、時計落下の原因になります。
9 完成イメージを明確にしておく

やり直しにならないように、6時もしくは12時、どちら側にどちらのベルトを付けたらよいかを予め確認しておきます。美錠タイプの場合、一般的には美錠側(金具が付いているほうのベルト)を12時側、剣先側を6時側に取り付けます。
※ただし、Dバックルを使用する場合には6時と12時を逆にすることがあります。
★新しいベルトの取り付け作業に入る前に時計本体のお掃除をしましょう!
ベルトを外した際は、時計本体をきれいにするチャンスです。
特に、ラグの間は、普段お掃除が行き届かない場所です。ブラシなどできれいに汚れを落としておきましょう。
10 バネ棒の片側を時計のラグ穴に入れる

時計の裏側が見えるようにして床に置き、バネ棒の片方を時計のラグの内側にある穴に入れてください。

片側のバネ棒がラグの穴に入ったら、ベルトを正しい位置まで近づけてください。
11 もう片方のバネ棒の先端を工具で押さえる
もう片方のバネ棒の先端を工具で押さえます。このとき、時計を少し傾けてしっかりと手で固定すると入れやすくなります。

12 バネ棒先端をラグ穴にはめる

そのままバネ棒の先端を押しながら時計の足の内側まで運び、時計のラグの内側にある穴にはめます。(穴の場所までバネ棒の先を移動すれば、バネの力によって勝手にはまります。)
※はまった感触やカチッという音が無い場合には、ベルトの付け根を持って少し小刻みに動かしてみましょう。
13 念のため工具を使用してバネ棒を押し込む

バネの力で勝手にはまるとお伝えしましたが、何かしらの原因によってしっかりとはまっていない場合もあります。写真のように工具を隙間に入れてバネ棒をしっかりと押し込む作業をしておくと安心です。
さらに念のため、ベルトの付け根を持ち、片側ずつ上下左右に動かして外れないか確認してください。
※写真では両方いっぺんに引いているように見えるかもしれませんが、実際に行う際は、必ず片方の手で本体ケースをしっかりと抱えて、片側ずつ確認作業を行ってください。(もし両側ともしっかりとバネ棒がはまっていないまま両方一気に引いてしまうと時計落下の危険性があります)
14 時計をきれいに拭く

最後に時計をきれいに拭いたら完成です。

最後までお読みくださいまして誠にありがとうございます。
by Tetsuro Enomoto
※今回写真では便宜上指サックを使用しておりますが、ベルト交換時の指サックのご使用は必須ではありません。
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