ベルト調整方法【種類ごとに解説】

ベルト調整方法【種類ごとに解説】

 

皆さんはよくインターネット通販サイトでお買い物をされますか?

最近は扱う商品が増えて活用する機会も増えたのではないでしょうか。

インターネットショッピングで時計を購入された方もいらっしゃると思います。

その中にはご自身でサイズ調整ができないために、届いてすぐに使うことができなくてお困りの方もいらっしゃるかもしれません。

 

そのような方のために、今回は時計ベルトの調整方法をご紹介いたします。 

※ 本サイトでご紹介する方法を実際に行う場合には、すべて自己責任で行ってください。
時計本体及びベルトに傷を付けたり、怪我などをなさらないように十分にご注意ください。
お客様ご自身の作業に起因した事故等不測の事態につきまして、
弊社では一切責任を負うことができませんので予めご承知おきください。
また、少しでも不安を感じた場合は無理をなさらずプロにご依頼ください。 

 

 

ベルトの種類を確認する

 

ベルトにはいろいろな種類のものがありそれぞれ調整方法も異なります。

ポピュラーなものを4種ピックアップしておりますので、お持ちの時計がどれに当てはまるかご確認ください。

 

【スライド式】

駒を取らずに留め具をスライドさせることで着用サイズの調整をするタイプ

【ピン式】

駒と駒とがピンでつながっていて、ピンを取り外して駒調整を行うタイプ。

中のピンには割りピンタイプやC管ピンタイプのものなどがあります。

 

【ネジ式】

ピンではなくネジを使用して駒同士をつなげるタイプ。マイナスネジのものが多いです。

 

 

【板バネ式】

板状の金属パーツを駒の間にはめ込んで固定していて、そのパーツを外すことで調整ができるタイプ。

 

 

 

 

金属ブレスレット(金属ベルト)を調整する

ブレスレットの調整方法をご紹介します。

仕様に合った工具を用意して調整を行ってください。

 

石國商店でも一部工具の取り扱いがございますのでご活用ください。

 BERGEON バンド用メジャー (腕周りのサイズ計測に)

 BERGEON ドライバー9本組セット(ねじ式の場合に使います)

 

スライド式の調整方法

【使用する工具】

細身のドライバー 
ただし、マイナスネジ用に使用するわけではないので、似た代用品でもかまいません。
先が折れたりする可能性もあるため、あまり高価なドライバーは使わないでください。

 

 0. 中留のカバーは予め外しておいてください。

 

1. 留め具(受けの部分)の固定部を外す。
中留のカバー部分を外したあと、下図のように中留の受け部分にあるくぼみにドライバーを差し込み、テコの原理で持ち上げると固定部が外れます。


 
2. 中留の受部をスライドする。

    固定部を持ち上げてフリーの状態にしたら、そのまま中留の受部をスライドできるようになります。ご自身の腕周りに合わせて中留の位置を決めてください。

    3. 留め具を固定する

    金属ブレスレットの裏面をご確認いただくと薄っすらと溝があるのが分かります。

    (写真の場合には、駒と駒の間の溝)

    そこの溝に中留受けの突起部分を合わせてください。

    合っていない状態だと閉じることができないなどの不具合が生じることもあるため、少しずつずらして、はまる感覚を確認しながら調整してください。上手く合わさったら、先ほどドライバーで持ち上げた部分をおろして中留の受けを固定します。

    固定部を留めたらこれで調整完了です。

     

     

    ピン式の調整方法

    【使用する工具】

     


    バンド万力

    ピン抜き棒


    ハンマー

     

    その他ピンセットなど。

     

     1. 金属ブレスレットをバンド万力にはめる。

    とても細いピンをハンマーでたたく繊細な作業になるため、ブレスレットが動かないようにバンド万力に固定する必要があります。

     

    . ピンを抜く方向を確認する

    金属ブレスレットの裏面に矢印が書いてある場合には、必ず矢印方向にピンを押し出す必要があるため、矢印が下向きになるように固定してください。

    矢印が書いてない場合でもピンを抜き入れする方向が決まっている場合があります。間違った方向に抜こうとするとピンが抜けなくなるなどのトラブルの原因になります。分からない場合には無理に作業せずプロにご依頼ください。

     

     

    3. ハンマーでピンを抜く

    ピンの入っている穴にピン抜き棒を垂直に当て、ピン抜き棒の頭をハンマーで軽くたたいてください。

    一発で抜くより、何回かたたきながら徐々にピンを抜いてください。

    その際ピン抜き棒が左右にぶれないように指でしっかりと固定しましょう。

    ピンを叩きだすときには時計本体に余計な衝撃を与えないようにしましょう

     

    ピンを抜いたらコマを外してください。

    また、このときパイプピン式のものは、駒のピンが通る穴の内部に小さなパイプが入っていますので、落としてなくさないようにしましょう。

    パイプをなくしてしまうと後でブレスレットをつなぐことができなくなりますのでご注意ください。

     

    また、このような小さな部品はなるべくピンセットで扱うようにしましょう。

    パイプピンタイプの場合には、このように駒の中にパイプが入っています。

     

    4. 不要な駒を外す

    さらに取り外したい駒に付いているピンも同様に抜き、不要な駒を取り外します。

     

    5. ブレスレットをつなぐ

    ご自分の腕のサイズに合わせて不要な駒数を外したら、ブレスレットをつなげます。

    このときパイプピンタイプの場合には、パイプを駒の中に戻してから駒同士をつなげてください。

     

     ブレスレットの駒と駒とを合わせたら、バンド万力でしっかりと固定してください。

      

    ピンを入れる向きは先ほど叩き出した方向とは逆になりますので、バンド万力に挟むときにはブレス裏面にある矢印は上向きの状態になります。

    ピンの入れ始めは、ハンマーを使わずに可能なところまでピンセットなどを使用して差し込んでください。

     

    手で入れられないところまで入ったら、ピンを残り1㎜ほどになるところまでハンマーだけで優しく叩き入れてください。この段階ではピン抜きを使用しなくて大丈夫です。

     

     

    ピンの頭が1㎜ほど出ている状態になったら、ピン抜きを使用してハンマーで叩き入れてください。

     

    ピンがすべて入りきったら作業完了です。

     

    【ワンポイントアドバイス】

    作業の最後に、必ずピン抜き棒でピンを押してみて、ピンが抜け落ちないか確認してください。簡単に抜けてしまうのであれば何かしらの不具合が考えられますので、時計修理のプロにご相談ください。

     

    ネジ式の調整方法

    【使用する工具】

    ドライバー(ネジの頭と同じ幅のもの)

     

    バンド万力

      

     1. ブレスレットを固定具にはめる

    バンド万力などを使用してネジを外す際にブレスレットが動かないようにします。

     

     

    2. ネジ山に合わせたドライバーを選ぶ

    調節するネジ山の幅に合わせてドライバーのサイズを選んでください。

    幅が合わないものを使用するとネジ溝が削れてネジを外せなくなってしまうなど不具合の原因になります。

    ネジ山にドライバーをはめたときに余計な遊びがなく、しっかりと力が入るようなら問題ありません。

     

    3 ネジを外して駒を調整する 

    ドライバーでゆっくりとネジを回して外します。

    その際、ネジを初めて外すときにはロックタイトのような専用の接着剤でしっかりと固定されている場合があります。この場合、一気に外そうとするのは得策ではありません。

    少し正方向に回したら少し逆に回すことを繰り返すと外せる場合がありますが、あまりに固い場合には特殊な作業が必要となります。このような状態のときにはご自分で外すことは諦め、プロにご依頼されることをお勧めします。

     

    ネジがしっかりと緩んだら、ピンセットでネジを引き出してください。

    このときに抜けない場合にはネジが完全に緩んでいない場合がありますので、再度ドライバーで回してください。

     

    取り外したい駒のネジも抜いて駒を外します。

    改めてネジを締めたら完了です。

     

     

    板バネ式の調整方法

    【使用する工具】

     
    バンド用ヤットコ
    (無い場合は通常の先が細いヤットコでも大丈夫です)

     
    千枚通し


    妻折ヤットコ

     
    ハンマー

     

    1. 駒から板バネを外す

    板バネ式の裏面には矢印と突起部があります。

    突起部を外側に押し出すようにして板バネを外します。

    専用のヤットコ(バンド用ヤットコ)を使用するとわりと簡単に作業できます。

     

    このような工具が無い場合や、ヤットコで上手く突起部を押し出せない場合には、

    千枚通しを使用して下図のように押し出します。

     

     

    板バネの頭が出てきますのでそれを妻折ヤットコなどで抜き取ります。

     

    さらにもう一枚板バネを外して、不要な駒を外します。

    板バネを抜くと駒を外せるのですが、

    駒同士が絡んでいるので、駒の角度を変えるなどして上手に取り外してください。

     

     

    1. 駒を外したら、板バネをもとに戻す

    不要な駒を外したら、先ほどとは逆の手順で板バネをはめ込みます。

    先に手で可能なところまで入れておきます。

     可能なところまで入れたら、バンド万力にブレスレットを挟み、ハンマーで板バネを軽くたたき入れます。

     

     板バネがすべて中に入ったら作業完了です。

     

    ほかにもいろいろな種類の金属ブレスレットがあります。その中にはプロでも時間を要するほど複雑なものがあります。今回ご紹介した方法に当てはまらないとき、壁にぶつかってしまったときには迷わずプロに相談しましょう。

     

     

    まとめ

    腕時計のベルトの長さが適切でないと大変不都合があると思います。ご自身でできれば快適な時計ライフを満喫できることでしょう。これらの情報が皆様のお役に立てば幸いです。

     

    ただし、ご紹介したような方法を実際に行うには工具をそろえる初期投資がかかるのはもちろんのこと、時計本体やベルトに傷を付けてしまうリスクもあります。

    少しでもご不安であれば、専門家にご相談ください。

     

    石國商店の店舗には時計修理技能士やウオッチコーディネーターの資格を持つスタッフが複数在籍していますので、ご不安な点につきましてはしっかりとお答えします。

    時計修理のご相談は営業時間中であればいつでもご対応いたします。

    混雑時にはお待ちいただくこともあるかもしれませんが、ご予約は不要です。お気軽に店舗に起こしください。


     

    石國商店 店舗のご紹介

    弊社直営店の「石國商店」は、時計修理技能士の資格をもつスタッフが在籍している店舗です。石國商店では、電池交換作業の際に、ただ電池交換を行うだけでなく、末永く時計を大事に使っていただきたい思いから、ムーブメントの消費電流値を計測して時計の健康状態をチェックしております。取り扱う電池種類も豊富なうえ、電池の使用推奨期限も徹底管理しています。

     

     20233月にリニューアルオープンした「石國商店 東京ソラマチ店」

     

    石國商店を運営している会社(株式会社石国)は有名百貨店の時計修理コーナーを複数担当しております。担当している百貨店時計修理コーナーの中にはトップブランドが揃う日本有数の時計サロンもあります。

    社員の技術力向上にも積極的で、毎月店舗の技術リーダーを本社に呼び、修理事業部長による研修会を行っています。



    この会社では入社すると全社員が3級時計修理技能士を取得することが義務化されております。これはお店に立たない総務経理担当であろうと、すべての正社員が取得しなければならない徹底ぶりです。

     

    また、時計修理技能士の1級や2級についても、店舗の資格取得希望者に対して修理技術員が年間を通して研修指導を行い、毎年資格合格者を生み出しています。

    石国社員が取得した資格証書の写真
    社内に掲示されている時計修理技能士などの資格証書類

    (写真に見えていないところまで並んでいます)

     

    時計についてお困りの際には、ぜひ一度 石國商店にご相談ください。