時計ベルト(バンド)のサイズ調整について

時計ベルト(バンド)のサイズ調整について

皆様は時計を購入されたとき、店員さんに駒調整をしてもらった経験がありますか?

 

時計のブレスレットは多種多様ですので、その調整方法もいろいろあります。 今回は店員さんがどのようにして時計のブレスレットを調整しているのか、代表的な3種類の調整方法を見ていきましょう。

 

 

【目次】

 

  1. はじめに
  2. 割りピンタイプのサイズ調整方法について
  3. パイプ(C管)・ピンタイプのサイズ調整方法について
  4. 板バネタイプのサイズ調整方法について
  5. その他の駒の種類のサイズ調整方法について
  6. まとめ

 

 

1.はじめに


 


本サイトでご紹介する方法を実際に行う場合には、すべて自己責任で行ってください。時計本体及びベルトに傷を付けたり、怪我などをなさらないように十分にご注意ください。お客様ご自身の作業に起因した事故等不測の事態につきまして、弊社では一切責任を負うことができませんので予めご承知おきください。また、少しでも不安を感じた場合は無理をなさらずプロにご依頼ください。

 

 

 

2.割りピンタイプのサイズ調整方法



割りピンとは二股に分かれたピンのことで、端の部分が図のように膨らんでいます。


 

端の膨らんだ部分が穴に引っかかり、留められる仕組みになっています。

割りピンが劣化して磨り減ってきたり、2つに割れてしまったりすると、簡単に抜け落ちてしまいますので定期的な交換をお勧めします。

割りピンタイプは多くのブランドで採用されている極めてポピュラーな方式です。そのため、時計修理屋さんであれば、すぐに修理対応してもらえると思います。

※当サイト「石國商店EC」や弊社店舗(時計ベルトコーナー)にご依頼いただければ、有料ではございますが割りピン交換が可能です。(特殊な形状の場合には即日対応が難しい場合がございます)

 

■駒の外し方と注意点

まず、ブレスの裏側を確認します。
多くの時計では、駒にピンを抜く方向が矢印で示されています。

ブレスをしっかりとバンド用万力で固定し、ピン抜き棒の先を確実にあて、矢印の方向にハンマーで叩きます。一発で抜こうとせずに何回かに分けてピンを叩き抜きます。

駒外し後にピンを戻し入れる際、駒の側面がフラットになるまで叩き入れ、完了後にピンが抜け落ちないかピン抜き棒で押して確認します。

もしも、矢印の刻印が無いときには、駒のサイドの穴を見ます。

下図のように、中央に細い隙間の空いたほうが頭になります。
駒調整をするときには、その反対側から押し出します。
ただし、ネジ式と見間違えないように気をつける必要があります。
もしもネジ式のものを割ピンと勘違いして叩いてしまうと破損してネジが外れなくなる場合もあります。

注意1:割りピンタイプに限らず、作業する台に柔らかいマットなどが敷かれていると、それがクッション代わりになってしまい、なかなかピンが抜けない原因になりますので、なるべく柔らかいマットなどは敷かずに固い台で作業します。

注意2:割りピンを逆から抜くと、割りピンの頭が内部で引っかかり、抜くことがひどく困難になりますので、必ず図のように矢印の方向に叩き出します。ただし、稀に以前サイズ調整をした人が間違えて反対側から入れていることなどもありますので、矢印がある場合でも、どちらが頭側かを確認しておきます。

注意3:割りピンを入れる際には、基本的にはどちらからでも入れることができてしまいますが、注意2」のようなこともありますので、次に作業するときのことも考え、ルール通りに入れることが重要です。




3.パイプ(C管)・ピンタイプのサイズ調整方法



 

このパイプ・ピンタイプは舶来の時計など比較的高価な腕時計に多く見られます。

パイプ・ピンタイプは、パイプにピンを圧入することにより駒を固定する方法です。
そのため、パイプが元の状態よりも拡がってしまったり、ピンが磨り減ってくると、ピンが抜け落ちやすくなりますので、こちらも定期的な交換をお勧めします。  

上の写真のようにパイプが駒の中に入っています。(写真ではパイプは1つですが、ブレスのタイプによってパイプを複数使用するものもあります。また、パイプの場所は中央のほかに端側に入っているタイプもあります。)

 

■駒の外し方と注意点

ここで使用する工具も、割りピン同様に、「ハンマー」、「ピン抜き棒」、「バンド用万力」を使用します。外し方は割りピンと同様です(バンド万力で固定し、ピン抜きで叩き抜きます)。矢印の方向にも気をつけます。

注意1:パイプ・ピンタイプはピンやパイプなどパーツが多いので、なくさないように外したパーツをすぐに空ケースや透明のビニール袋にしまいます。

注意2:ピン抜き棒のサイズによっては、駒の中のパイプにはまり、ピン抜き棒自体が抜けなくなってしまうことがあります。ピン抜き棒には、0.7ミリ、0.8ミリ、1.0ミリなど太さがいろいろとあります。どのピン抜き棒を使用すればよいか不明の場合には、いきなり太いものを選ばず、一気に叩き入れるのではなく、少しずつ叩いてピン抜き棒が常に抜ける状態であることを確認しながら作業を進めます。




4.板バネタイプのサイズ調整方法



 

このタイプは比較的お手頃な価格帯の時計に多く見られます。

これまでご紹介したピンのタイプとは違い、板状の固定用パーツが駒にはまっています。下の写真のように、裏側を見ると板バネの端の部分には突起部が見られ、それが溝にはまると固定される仕組みになっています。


■駒の外し方と注意点

外し方は専用工具(ヤットコ)の尖がっている部分を写真のようにブレス裏側の突起部のある穴の中に入れ、もう片方を駒の端にあてます。そして、そのままペンチを挟めば、板バネがニョキッと出てきます。

工具は写真のような専用のヤットコを使います。キズ防止のためにも、なるべく専用の工具を使用することをお勧めします。

 
 
 

注意1:このタイプの難点は、調整する際にキズを付けやすいところです。専用工具が無い場合に、ドライバーやセンマイドウシを使用する人もいますが、その際どうしても板バネにキズが付きやすいので、そのようなものを使用する場合には透明ビニールをかませるなどのキズ防止策が必要になります。

注意2:駒の端に工具の先端(平たくなっている側)をあてる際、板バネの出口を塞がないように注意します。

注意3:板バネが外れても、中央が知恵の輪のように駒同士が引っ掛かって繋がっていますが、駒同士を少し動かせば簡単に外れます。無理な方向に動かして変形させないように気をつける必要があります

他にもいろいろな調整方法のものがあります。これで全てではありませんが、簡単にご紹介します。




5.その他の駒の種類のサイズ調整方法について



 

 

【フリーアジャストタイプ】


これは部品を外すのではなく、スライド式の中留めにある爪を起こして、中留め自体をスライドさせて長さ調節をします。

 

 

【Sバンド】


伸縮タイプのブレスレットです。Sバンドと言われる理由は、裏側から見ると、部品の形が「S」に見えるからと言われています。このタイプは駒同士を手に持ち、互い違いに付いている部分を器用にネジって外します。

 

 

【エバーバンド】


これも伸縮タイプのブレスレットです。こちらはSバンドよりも若干複雑な構造です。脇の爪を起こして、中からコの字型のパーツを抜いてから駒を外して調整します。

 

 

【メッシュブレスタイプ】

(ステンレススティール)
本体ケースとブレスがロー付けされていて一体型になっているタイプのブレスです。このタイプは中留めを外し、ブレスの端から専用の工具でカットして長さを調節します。一度カットすると元に戻せませんので、正確な腕周りの計測が必要になります。

 

 

【バネ棒タイプ】


割りピンやパイプ・ピンではなくバネ棒を使用して駒を固定しているタイプです。通常はバネ棒が外しやすいように裏側にバネ棒外しを差し込む穴がありますが、無い場合でも側面の穴からピンを差し込めばバネ棒の先が押され容易に外すことが可能です。

 

 

【両ネジタイプ】


これはブレスの左右両方にネジがあるタイプです。片側だけにマイナスドライバーを差し込んで回しても、回り続けるだけで外れません。もう一方のネジを受け台というマイナスドライバーの先が付いたもので固定して、ネジを回して外します。メーカーによっては専用の工具があります。

 

 

【タグホイヤー セル】


これは左右対称になっている駒が連なっているブレスです。外すのは必ず中留め側の端からになります。中留めの12時側か6時側を外し、ブレスの端から駒を開いて外して調整します。左右の駒がすぐ緩むようであれば、ブレスの交換が必要になります。

 

 

【タグホイヤー リンク】


形や調整方法はセルに似ていますが、内部がネジで固定されています。左右対称になっている片側の駒を外したらネジが現れますので、そのネジを外すことによってもう片方も外すことができるようになります。

 

 

【ロレックス(ネジ式ブレス)】


ネジもしっかりしていて作業は比較的に簡単だと思いますが、ドライバーを差し込むネジの溝がわりと太いので、必ずその溝の形状に合ったマイナスドライバーを使用する必要があります。なお、新品のブレスは固定剤がしっかりと付着していてネジ回しが固い場合があります。

 

 

【ロレックス(非ネジ式ブレス)】


旧タイプのブレスは、ネジ式ではなく、すべての駒が中央の口を閉じたパーツでつながっています。裏側からそのパーツの中央境目を押し広げれば開きますが、無理にやると変形してしまうため、メーカーに出して調整してもらう必要があります。

 

 

【カルティエ マスト21】

(7連ブレス)
7連ブレスは一見複雑ですが、そこまで難しくはありません。駒の裏側にある2つの小さなネジを外すと駒の端が外れる仕組みになっています。ただし、パーツが小さいので、ネジなどパーツをなくさないように注意する必要があります。

 

 

【カルティエ ロードスター】


一見すると、単なる両ネジタイプに見えますが、実は内部にピンが入っています。そのため、両方のネジを外すだけではなく、ピン抜き棒で押し、ピンを抜いてから駒を外す必要があります。

 

 

【アルフレッド・ダンヒル ミレニアム】


裏側を見ると駒同士の境、中央のところに穴があり、そこに小さなプッシュ式のバネがあります。細いピン抜き棒を入れてそのバネを押すことで駒のロックが解除され、駒を横にスライドして外せます。バネをあまり強く押すと、壊れてしまいますので注意が必要です。

 

 

【IWC パイロットブレス】


駒の裏側にプッシュボタンがあり、それを専用のピン押しで押しながら、同時にサイドからピン抜き棒で押すとピンが抜けてきます。購入時に専用のピン抜き棒が2本付いてきます。無い場合はやや太めのピン抜き棒で十分対応可能です。

 

 

【ブライトリング ナビタイマーブレス】


ネジ式ですが、ネジを外した後に隣の駒と互い違いになっているパーツを一つ一つバラバラにしていかなくてはいけない複雑な仕組みになっています。他のものと比べると難易度は高いと思います。

 

 

その他にも、エルメスクリッパー、シャネルJ12のセラミック、クレドールのリネアクルバ、ラドーのセラミック、カルティエラニエール、ジャガー・ルクルトのイデアル、ジンの六角レンチを使用するブレスなど個性的な調整法のものがあります。

ビッグネームだけれども意外と一般的な仕様で難易度が低かったり、または逆にあまり知られていないブランドで難易度が高かったりするものがあったりと、世の中には多様なブレスレットのサイズ調整方法が存在します。




6.まとめ



いかがでしたでしょうか。簡単ではありましたが、以上をもちましてサイズ調整方法のご紹介を終了いたします。

 

今回はとてもポピュラーな3タイプのものを中心にご紹介させていただきました。

内容を見ただけだとけっこう簡単に思われた方も多いと思いますが、ご紹介した内容はあくまで基本のお話であり、他にも、例えばネジタイプの作業では基本的にネジ止め剤を使ったほうがよいことなど、経験の無い人が作業するためには知っておかなければいけないことがまだたくさんあります。

実際のサイズ調整につきましては、時計を購入したお店はもちろん、経験豊富な時計修理、時計ベルトに携わるプロにお任せいただくのが一番良いと思います。

※当サイト「石國商店EC」や弊社店舗(時計ベルトコーナー)にご依頼いただければ、有料ではございますが割りピン交換が可能です。(特殊な形状の場合には即日対応が難しい場合がございます)

ほかにも時計のことにつきましてはいろいろとご提案ができることがあると思いますので、時計でお困りの際はどうぞお気軽にご利用ください。

最後までお読みいただきまして誠にありがとうございます。


by Makiko Kanke

ベルト関連記事
時計ブレスレットのサイズ調整について

時計ブレスレットのサイズ調整について

時計ベルトの交換方法

時計ベルトの交換方法

dバックルとは

dバックルとは

dバックルの魅力

dバックルの魅力

腕時計のベルトの選び方とは-サイズの測り方や選ぶ際の注意点などを徹底解説

腕時計のベルトの選び方とは

ベルト調整方法-種類ごとに解説

ベルト調整方法-種類ごとに解説

時計ベルトの種類

時計ベルトの種類